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診療科・部門紹介
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胃外科

胃外科

最終更新日 : 2023年1月7日

バックナンバー

※ こちらのページは医療機関向けとなりますが、一般の方もご覧いただけます。 


がん研有明病院・胃がんグループは、チーム力を結集し、
患者さんをお迎えいたします。

各部長よりごあいさつ

  • 布部 創也
    胃外科部長
    布部 創也
    ロボット手術の保険改訂、胃癌治療センター化への動き
    平素より沢山の患者さんをご紹介頂き、誠にありがとうございます。胃癌外科治療の最近の話題は保険改訂が増点されたロボット支援下手術かと思います。繊細な操作が可能で、合併症の低減が期待されております。特に高齢化した患者さんへの外科治療に福音かと思います。また来年には胃癌学会の認定施設制度も発足します。多様化が進んだ胃癌治療のセンター化を目指しての施策です。 このような時代の流れにも対応しながら、総合力で患者さんの治療にあたります。がん研有明病院にお任せ頂ける患者さんがいらっしゃいましたら、いつでもご連絡ください。
  • 藤崎 順子
    消化器内科
    部長
    藤崎 順子
    コロナ禍の内視鏡検査について
    いつもたくさんの患者さんのご紹介ありがとうございます。コロナ禍での 内視鏡検査は先生方も毎日戦々恐々、十分な対策を立てていらっしゃるかと 存じます。当院でも上部消化管内視鏡検査では患者さんに不織布マスクをしていただくなどの工夫をしています。最近では検査施行後、数日後にコロナ陽性の連絡があり、当院感染対策部と相談し対応し、施行医、担当看護師の感染はありませんでした。まだまだ油断はできない状況ですが、万全の対策をとっておりますので、安心してご紹介お願いいたします。
  • 山口 研成
    消化器化学療法科
    部長
    山口 研成
    オプジーボの一次治療への適応拡大
    胃がん化学療法で大きく代わったのは、一次治療で我々の免疫を活性化させてがんを抑え込みに行くオプジーボが国際共同試験において患者さんの生存期間を改善させることが科学的に証明され、適応になったことです。そのために、今まで以上の治療効果が期待される一方、活性化された免疫ががんのみならず、我々の体に影響を与えてしまう副作用も認められ、的確な対応が求められます。
     がん研有明病院では治療開発臨床研究の治験の段階からいち早く取り組んでいくことと共に、免疫関連の副作用に対する癌腫横断的なチームによるサポートも確立されて、副作用対策を速やかに的確に行う体制をとっております。
     着実な進歩を遂げている化学療法を患者さんに安全かつ効果的に提供するため、日々取り組んでいます。ご相談などありましたら気軽にお問合せください。

海外施設訪問記

コロナ禍で制限されていた海外での学術活動が徐々に緩和

7月にシンガポールでのSingapore Gastric Cancer Consortium 2022への参加とNUH(National University Hospital),Gleneagles Hospitalへの訪問、8月にマレーシアでのGUT2022への参加とUMSC(University Malaya Specialist Centre), National University of Malaysiaへ訪問して参りました。いずれも学会参加と内視鏡指導、そしてAIメディカルサービス社と開発を進めてきたAI胃癌診断システムを用いた国際共同研究の推進が目的です。現地医師によると、両国とも発見される胃癌の7-8割が進行癌であり、  検診制度の有無という違いはあるものの、内視鏡医の習熟度もその原因の一つと認識しているとの事でした。アジア諸国における胃癌診療の実情に触れると共に、内視鏡医の診断技術の向上、AIによる診断補助など、がん研が寄与できる部分は大きいと感じる事が出来た海外施設訪問でした。

図1. NUHにて内視鏡指導
図2. UMSCのDrによるAIデモ機の性能確認

(上部消化管内科 並河 健)

PERICANの取り組み: 入退院支援室のご紹介

入退院支援室は2020年4月に発足しました。薬剤師・栄養士・看護師が常駐しており、内科・外科に関わらず入院を予定するすべての患者さんが、スムースな入院治療、早期退院が実現できるよう、入院前から様々な支援を行っています。

外科切除の場合は、周術期管理チームPERICAN(Perioperative team at Cancer Institute Hospital:ペリカン)として、薬剤師・栄養士・看護師が専門的立場で面談します。薬剤師は持参薬管理、中止薬の確認や服薬指導などを、栄養士は術前の栄養状態の評価や栄養指導を行い、看護師は手術に必要な準備および治療のイメージがもてるように、クリニカルパスに沿った入院までの流れを説明します。

入院を予定されている患者さんは、内科・外科に関わらず、食生活や日常生活全般が変化することを不安に思われている方が多いため、看護師はすべての患者さんと面談し、一人一人の不安や疑問に対して、それぞれの状況に合わせ治療に挑めるよう、尽力しています。また、ご希望の場合は、医療ソーシャルワーカーやチャイルド・ライフ・スペシャリストと面談ができるように調整します。すべての患者さんが安心して治療を受け、退院後はそれぞれの地域での生活が過ごせるよう、外来・病棟看護師とも連携し継続したサポートに努めています。

(入退院支援室 吉宮 瑞穂)

Dr.平澤の内視鏡クイズ

Dr.平澤 Q: 原発性胃癌以外に鑑別に挙げる疾患は?

50歳代女性.人間ドックの内視鏡検査で胃癌 (por, sig) を指摘され紹介.
既往:4年前に乳癌を手術、再発なく経過.ピロリ除菌歴なし.ピロリ抗体陰性.

A: 乳癌の胃転移

背景粘膜は萎縮がなく、胃底腺ポリープが多発している。典型的なピロリ未感染の所見。

体中上部大弯後壁に広範な褪色調の陥凹性病変を認める。未分化型の早期胃癌、MALTリンパ腫を疑う所見である。この症例で気をつけるべき点は、乳癌の既往だ。乳癌の胃転移は、HE染色だけだと原発性胃癌と鑑別ができないことがある。病理の依頼書に「乳癌の既往あり、乳癌胃転移の可能性は?」と記載した。当院の病理レポートは「Adenocarcinoma, poorly differentiated,GATA-3(+)※, ER(+)※, HNF4α(-)※※であり、乳癌の転移に合致する所見」であった。以上より乳癌の胃転移の診断で、乳癌に対する化学療法の方針となった。※乳癌のマーカー※※主に消化器系の上皮(胃・腸・肝胆膵など)で発現する転写因子。

乳癌の消化管転移は8.9%と報告されており、胃への転移は比較的まれとされている。内視鏡像はスキルス胃癌様、早期胃癌様、SMT様など多彩な所見をとり、特異的な所見はない。病理組織診断は、HE染色だけでは原発性胃癌と鑑別できないことがあり、免疫染色が必要となる。

乳癌の既往がある胃腫瘍は、乳癌の胃移転の可能性を考える!
病理依頼書に乳癌胃転移の可能性は?と記載する

低侵襲手術の増加

胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術は当初、開腹手術に比べて傷が小さいことが「低侵襲」と捉えられておりましたが、日本や韓国で行われた大規模なランダム化比較試験の結果、出血量が少なく、疼痛軽減や腸蠕動の早期回復の効果もあることが示されました。さらに早期胃癌だけでなく進行胃癌に対しても、腹腔鏡下手術が開腹手術と同等の長期成績であることが、日中韓それぞれで行われたランダム化比較試験で示されました。

日本内視鏡外科学会による「内視鏡外科手術に関するアンケート調査」によると、全国的に胃癌に対する低侵襲手術は年々増加し、2019年には38%を占めました(右図)。前述の結果を受けて、低侵襲手術は今後さらに増加すると思われます。

ロボット4台目導入

当院は胃癌に対する腹腔鏡下手術の技術認定医が6名、ロボット手術のプロクターが3名在籍し、これら低侵襲手術を積極的に行っています。2021年は低侵襲手術の割合が全手術の77%を占めました。昨年のロボット手術は101例で、全国屈指の手術件数です。今年10月からDaVinci Xi 4台目が稼働し、さらに手術件数を増やせる体制になります。

胃切除術前・説明動画を公開しています

がん研胃外科では、これから胃がんの手術をうける 患者さんを対象に術前説明用の動画を作成しました。 動画はYouTubeで閲覧出来ます。右図のQRコードからもご覧になれます。(https://youtu.be/kwiYQ8g5CIA)